その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―



ずっと喧嘩腰の広沢くんの態度にため息が出る。

これ以上、会話をしてもムダだ。


「とにかく、ここはもう時間だから席を立って」

最後にそれだけ言って広沢くんに背を向けると、不意に立ち上がった彼に後ろから手首をつかまれた。


「何?」

驚いて振り向くと、広沢くんが私を見つめて切なげに目を細める。


「今日一日北原さんのこと見てて思いました。部下への気遣いの仕方とか、 フォローの仕方が碓氷さんと似てるって」

「そんなことないと思うけど」

「似てますよ。無自覚なら、余計にムカつきます」

私に向かって低い声でそんな言葉を口にする広沢くんの表情は、怒っているようには見えない。

むしろ、とても悲しそうに見えた。


「それって、気付かないうちに似ちゃうくらい、お互い想ってたってことですよね」

「広沢くんの言ってること、よくわからないんだけど。似てないし、もう何の関係もないのよ」


手首をつかむ広沢くんの手の平が熱い。

どうして広沢くんは、私なんかにこんなに一生懸命なんだろう。


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