その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―
広沢くんの私を見つめる眼差しが、手首から伝わってくる手の平の温度が、否応なしに私の胸を熱くする。
広沢くんは私と北原さんとの過去にこだわるけれど、私は……
心の中で何かがゆっくりと動き始めたとき、広沢くんの手の中でスマホが鳴った。
私たちの沈黙を破るように鳴り響いた着信音で、お互いが我に返ったようにハッとする。
広沢くんのスマホの画面にちらっと表示されて見えたのは秦野さんからのメッセージで、内容はよくわからないけれどハートマークのスタンプがあったような気がした。
「秦野さん?」
彼女の名前を口に出したことで、少しずつ冷静になっていく。
私は何を思いかけていたんだろう。
広沢くんには、ちゃんと彼に見合った相応の人がいるのに。
「そうですけど、これは別に……何の意味もないんで」
秦野さんから送られてきたハートいっぱいのスタンプを私が見たことに気付いた広沢くんが、ちょっと焦ったようにスマホを下ろす。