その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―


それから、思わず吹き出してしまう。


「大丈夫よ。まだ人通りはある時間だし、駅までの道は明るいし」

ティラミスに腕を伸ばしながら話していると、横から広沢くんが先にそれを奪った。


あ。最後のひとつ……

部下相手に口に出せなかった言葉を飲み込む。

奪われてしまったことによる未練で、つい視線でティラミスを追いかけると広沢くんと目が合った。


「俺も食べようかな」

「私と一緒に?」

「……」

コンビニスイーツを家で食べる。そういう思考回路になっていたから、深く考えもせずにそう言ったら、なんだか妙な間ができた。


「それ、どういう意味で言ってます?」

広沢くんに真顔で聞かれて、返答に困る。

確かに、さっきの私の言葉は部下へのセクハラ発言とも捉えかねられない。



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