その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―



つまり。

秦野さんは同僚に誘われた飲み会に行きたいから、取引先への訪問後に会社に戻ってきたくなかったというわけだ。

そんなことで、明日の打ち合わせは大丈夫だろうか。

なんだかさっきよりも頭が痛くなってきた。

個室から出るタイミングを失ったのもあって、もう一度蓋の閉まった便座に蹲る。


「けど、広沢くんは大丈夫なの?怒られない?」

盗み聞きしたいわけではないけれど、彼女達の会話に広沢くんの名前があがってきたことにドキリとした。


「大丈夫っていうか……むしろ、心配されたり怒られたりしてみたいよ」

なぜかほんの少し脈があがっているような気がする私の耳に、秦野さんの沈んだ声が聞こえてくる。


「何?ケンカ中?」

「ケンカも何も……誤解してるみたいだけど、あたしと広沢くんは付き合ってないよ」

「えー?そうなの!?」

何人かが大袈裟に叫ぶから、その声がキーンと響いて頭痛が増した。


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