極上御曹司のヘタレな盲愛
18時25分にロビーに降りた。

今日、水曜日はノー残業デーで…終業時間から1時間経っても1階ロビーは、帰りに飲みや食事に行ったりする待ち合わせの人達でごった返していた。

ロビーの隅っこの方で、出来るだけ気配を消しながらエレベーターの方の様子を窺う。

それでもやはり今朝の騒動の噂が会社中を駆け巡ったらしく、隅っこの私をチラチラ見る人も少なくはない。

やっぱり社屋を出た所で待ち合わせた方が良かった…。
しかも…大河と別れる時『好き』と言って逃げてしまった。
顔を合わせるのがどうにも恥ずかしい。
どうする?逃げちゃおうか…。先にコッソリ帰っちゃう?

また逃げグセが顔を出そうとした時、エレベーターから大河が降りてきたのに気づいた。

大河はエレベーターから降りて数歩歩き、ロビーを見回すと、すぐに隅っこに立っている私に気がつき、笑顔でこっちに歩いてくる。

ロビーにいる大勢の人達の目が全て大河の笑顔に釘付けになった。

あれ?大河って…こんなにカッコよかった?
確かにイケメンではあったけど…なんだか大河の周りがキラキラして見える…。
それに…こんな大勢の人の中から…隅っこにいる私をすぐに見つけてくれるんだ…。

どうしよう。胸がドキドキして煩い。

「お待たせ…行こうか」

私の前まで歩いてきた大河は、私の手を取ると指を絡めて手を繋ぎ、そのまま私を引っ張り…人でごった返すロビーの真ん中を堂々と横切ってエントランスから外に出た。

ロビーが一瞬騒ついた。
みんなが見ているかもと思うと耳まで真っ赤になって、私は顔を上げる事が出来なかった。


「ちょっと!あんな所で手なんか繋いで!」

「ふっ…みんな見ていたな…。いいんだよ、見せたいんだから。俺のだってわかったら、高橋みたいに桃に近づく男も居なくなるだろ?」

「もう!」

会社から少し離れた所で大河に抗議すると、大河はシレッとした顔で言った。

「自分だってエレベーター前で俺にキスしたクセに?手を繋いだぐらいで文句言うなよ」

「なっ!」

「あの時桃が言った事…あんまりよく聞こえなかったんだ。もう一回ちゃんと言ってくれよ」

「な…何も言ってないもん!」

大河がクスクス笑う。
聞こえてたくせに!やっぱりイジワルだ…。

駅までの道をずっと手を繋いで言い合いをしながら歩いた。

でもそれも楽しくて仕方なかった。


初めての恋に浮かれていた私は…。

言い争って歩く2人を…遠くから見ている…氷のように冷たい視線がある事など、全く気づきもしなかった…。


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