極上御曹司のヘタレな盲愛
その時…。
バーンという音とともに、部屋のドアが開いた。

「キャッ!」

大河から慌てて離れ、真っ赤な顔で手の甲を口に当てている私に、シレッとした顔の母が…。

「あらあら、邪魔しちゃってごめんなさいね〜。ねぇ、桃ちゃん。今日の晩御飯なんだけど…お肉とお魚、メインはどっちがいいと思う?」

「お…お肉…?」

「了解〜♪大河君も食べていくでしょう?じゃあ、悠太君も呼んじゃおうっと!」

母はドアを閉めようとして振り返り、私と大河の顔を見てニヤッと笑って見せると…。

「本当に邪魔をしちゃって御免なさいね。
続きをどうぞ…ごゆっくりね〜」
と言いドアを閉めた。

暫し無言で大河と目を見合わせる…。

「も…もう!あれ絶対にワザとだよ!
いつもはノックもしないで開けるなんて事、絶対にしないもの!」

大河はクククと楽しげに笑う。

「あの調子だと今頃おじさんにメールか電話をして、2人で大笑いしている事だろうな…」

「…ご…ごめんね…」

「なんで謝るんだよ。…こんなのもなかなかスリルがあって楽しいよな…」

大河はそう言い、また私の腕をとり引き寄せると、髪を撫でチュッとおでこにキスを落としてきた…。

え?続き?続きをするの?ちょっと待って!

焦りまくる私の心中など知ってか知らずか…。

「さてと…おばさんには続きをどうぞって、せっかく言ってもらったけど…。
流石にここでこれ以上は出来ないよな…。
続きはまた後日という事で…。スマホを見にいくとするか。夕飯までには戻らないといけないし…」

と冷静に言って立ち上がった。

後日…⁉︎また全身真っ赤になってしまう。
絶対にワザと言ってる!イジワル!変わってない!
以前とは…イジワルの方向性が違うけど…。

そっと見上げると…優しく微笑んで、私に手を差し伸べる大河と目が合った。

絶対にこの男にときめく事なんて、一生ないと思っていたのに…。
どうして今…目が合っただけで、こんなにも胸が高鳴るんだろう。

でも…。
まだ『好き』って気持ちがよくわからない…。

急に…昨日、思いもしなかった告白を受けて…。
大河と付き合う事になって…。

大河という大きな台風に巻き込まれて翻弄されて…目が回っている…。

大河は私の事を、愛してるって言ってくれるけれど。

『好き』って気持ちがよくわからない私が、大河の事を『愛してる』って言える日が…いつか来るんだろうか…。


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