極上御曹司のヘタレな盲愛
「全部言わせてみたい気もするけど…。それじゃあ、男が廃るってもんだよなぁ…」

そう言って笑って、また額にキスをする。

「お前にいいもの見せてやるから、ちょっと待ってろよ」

そう言うと大河は、ヨイショとベッドから降りると、なぜかベッドルームを出て行った。

え……?いいものって…?…今…?
私の一世一代の告白は…⁉︎
無理矢理言わせておいて!もう!

大河はすぐに何かを手に持って戻ってきた。

ベッドの上の私の横に体を滑らせ、枕を積み上げて、そこに凭れて座るよう私に促すと、肩を抱き、一枚の紙を手渡してきた。

「何?…これ…」

その紙には…二つの棒人間みたいな絵が…色んなポーズで…初期・中期・後期に分けてあって…。

「……?」
「ユキ先生、渾身の作なんだよなぁ…」

ユキ先生…?

「…!これって…!」

その絵が何かわかった途端、私の全身が真っ赤に染まった!

だって!右下の方に、殴り書きのように…。
『ゆっくり!優しく!激しくしない!無理はさせない!」
って書いてある…!

「一番最初にお前の検診に一緒について行った時、診察が終わった後、俺だけユキ先生と話しただろ?覚えてない?」

最初に大河と一緒に検診に行った時…?
覚えてる…。

大河を見て…受付のお姉さん達や、看護師さん、旦那様と一緒に来ている他の妊婦さんまで、きゃーっとクリニック内が騒ついて…。

診察室にいたユキ先生が出てきて…私と大河を見て…「あらあら、まあまあ」と笑っていた。

診察が終わって、大河が先生に質問があるんだけどって言って、なぜか私を診察室の外に追い出して、暫く出てこなかった…。

「覚えてる…けど…」

「あの時な…。お腹に子がいる桃を抱いても大丈夫なのかなってユキ先生に訊いたんだよな…。そしたら、ノリノリでこれを描いてくれて…。いくつかの注意事項を言われてさ。
まず…桃の悪阻が治ってから…。
それから、桃がしてもいいって思えるようになったら…。桃の気が乗らないのに無理強いしたらいけませんって…。
あと…これ使うこと…」

大河は、私が見たことない3、4センチ?四方の薄い何かを、指先で摘んでピラピラと振ってみせた。

「…それなあに?」
「避・妊・具」
「…ひっ…!」

「女子中学生みたいな反応すんなよ。
なんかつけずにすると、子宮収縮がどうのって…。
俺、ずっと準備して我慢してたんだぜ。
でも、なかなか桃の悪阻は治らないし。
抱き上げるとどんどん軽くなっているから心配だったし。
そんな桃に、しないかって訊ける訳もないし。
なんとか桃と触れ合いたくて一緒に風呂に入るのも…拷問みたいで…。
隣で眠る桃が可愛くて可愛くて…抱きたくて抱きたくて…眠れなくて…。
しょうがないから、書斎で残った仕事でもするかって…。
心頭滅却すれば…ってヤツ…?」

そうだったんだ…。

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