極上御曹司のヘタレな盲愛
その後、似鳥の家で…。

光輝とリビングのソファーに座り待っていると、しばらくして悠太に送られ桃が帰ってきた。

桃は俺と目が合うと唇を噛んで俯き、悠太に「ありがとうね…」と小さく呟くと、走って2階の自分の部屋に上がってしまった。

バタンと桃の部屋のドアが閉まる音を確認してから光輝が悠太に言った。

「桃なんかあったのか?さっき公園で泣いていただろう…」

「ああ…なんだ、見てたのか…」
悠太は苦笑すると
「俺が帰ろうとしたら、目の前をスリッパでペタペタ歩いて帰る桃ちゃんを見つけてさ…」

悠太が言うには…。
中等部の下校時間をだいぶ過ぎた頃、学校の来客用のスリッパを履いて校門を出てきた桃が歩いて帰るのを見つけたらしい…。

異様な格好の桃が、肩を落としてトボトボと歩いているので心配になって声をかけ、ひとまず公園のベンチに座らせ、桃の足のサイズを確認してから、近くの学校指定の靴屋に靴を買いに行き、戻って桃に靴を履かせた。

スリッパで歩いていた理由を訊いても口をひき結んで何も言わない桃を、根気よく問い詰めて吐かせたところ…。

桃が言うには…。
帰ろうとした所、自分の下駄箱にある筈の靴が無くなっていた…。
6月以降、靴が無くなるのはもう3度目で…1回目は昇降口のゴミ箱に捨ててあるのを見つけ、2回目は校庭の隅に捨ててあるのを教師が見つけた。

今日はとうとう見つからず、職員室で担任に言うと来客用のスリッパを渡されて、それで家まで帰るように言われたらしい。

靴を隠されないまでも、靴の中に大量の画鋲が詰まっていたり、インスタント食品の液体スープが入っていたり、泥や犬のフンまで入っていたりで、ここ数ヶ月で靴を何足も買い替えていると言う。

靴だけではなく、部活や委員会などで長く席を外すと…教室の自分の机の上にマジックで『死ね』『いい気になるな』『残念』などと書かれていて、机の中の教科書などが破られたり落書きされていたり、ゴッソリ捨てられたりする事が頻発していて、教科書やノートも何度も買いなおしていると…。

桃の友達や部活仲間が何かとフォローしてくれるらしいが、教師たちは学内でのイジメを認めたくないらしく、2回目に無くなった靴を校庭の隅で見つけてきた教師も…『何で君、あんな所で靴を脱いじゃったの…』とバカな事を言っていたらしい。

担任には、机の落書きも教科書やノートなどへのイタズラも、自分自身でやっている事じゃないのかと言われ『双子の片方が優秀だと、そんな事でもして気をひかないと誰も見てくれないから大変ね』とまで言われたらしい。

今日、靴がないと職員室に言いに行くと『またか…』という顔をされ、冷たくスリッパを渡された…と…。

そう言って桃は泣いていたらしい…。


「なんだよ…それ…。全然知らなかった…。完全にイジメじゃないか…教師も…」
光輝が呆然としながら言う。

「全部…俺のせいだ…」
俺は光輝と悠太に、旅行の時に花蓮から聞いた話をした。


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