極上御曹司のヘタレな盲愛
その年の夏休みが明けて…。

文化祭が近づき、生徒会の新執行部からの質問に答えていたりして光輝と2人、少し帰りが遅くなった日があった。

悠太は何か用事があったのか、その日は早く帰り、一緒じゃなかった。

光輝の買い物に付き合い、いつもの学校近くのバス停じゃなく駅の方に行こうと、学校から少し行った所の大きな池のある公園の中を突っ切って歩いていた時…。

「しっ!…隠れろ…!」

光輝が俺の腕を引っ張って小さな声で言い、池のそばのベンチを指差した。

見るとベンチに悠太が女子と座って、顔を覗き込んで何か親密そうに話している。

悠太の陰に隠れて隣にいる女子の顔は見えないが、角度によってはキスをしているように見えなくもない…。

「悠太にもとうとう春が来たか?」
光輝がニヤニヤ笑いながら言う。

「彼女の顔見てやろうぜ」
俺が言い、2人で気づかれないようにそっと大回りをして逆側に回り込んだ。

女子は中等部の制服だ…。
なんか…嫌な…予感…。

「なんだよ…。桃じゃん…。」
光輝が呟く。

俺は…ベンチに寄り添って座る2人を見て…もう胸が苦しくてしょうがなかった…。

「桃…泣いてるな…」

見たくはないが…光輝が言うのでよく見ると、本当だ…桃が泣いている…。

次の瞬間、悠太が桃をギュッと抱きしめ、頭を優しく撫でるのが見えた。

「‼︎」
俺がその場から飛び出そうとすると、光輝が強い力で俺を抑えた。

「待て待てっ!大河!今は堪えろ!悠太がお前を裏切る訳がない!きっと何か事情がある筈だ!」

「でも!」

「それに俺達…特にお前の姿を見たら、桃は絶対に逃げ出すから!」

「……!」
確かにそうだけど…。

「とりあえず今は家に帰ろうぜ。そのうち悠太も桃を送ってうちに来るだろうし、事情はその時に聞こう…」

光輝は俺の腕をグイグイ引っ張って歩き出した。

「…なぁ光輝…。桃は…悠太の事が…好きなのかな…」

歩きながら俺がポツリと呟くと、光輝は前をじっと見たまましばらくして答えた。

「桃は…優しい悠太の事を、たぶん俺以上に兄みたいに思ってると思う…。俺に言わない事も悠太には相談したりするし、よっぽど頼りにしてると思う。でもそれは恋愛感情じゃないと思うぜ…まだ…今はな…」

今は…か。

「じゃあさ…悠太は…桃の事が好きなのかな…」

光輝はチラッと俺に目をやると
「悠太はお前を裏切らないって…さっき言ったろ」

好きなのかってとこは否定しないんだな…。

俺はたとえ親友の悠太にだって…この先桃を渡す気なんてない!

でも…桃が悠太の事を本当に好きになってしまったら?

俺は祖父さんのように、一生後悔して生きなければいけないのだろうか…。


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