LONELY MOON ―ロンリームーン―
 


心の片隅で、ほんの少しだけ気になっていたこと。

だって、俺はこいつと同学年だぞ?

後輩でも子分でもねェのに、敬語を使われる義理はねェ。

と、ふと思っただけだった。



「…俺、2年だぞ」

「…ええっ!!」



案の定、女は俺のことを先輩だと思っていたようだった。

…それにしても面白い。

こんなにも分かりやすいリアクションをする奴だったのか。

思いっきり目を丸くして、口もあんぐりと開けている。



「え…っ、え!嘘っ」

「嘘じゃねぇ」

「え、先輩かと思ってた!」

「…それは俺が老けてるって言いてェのか?」

「違っ!すごいっ大人っぽかったからっ!!」



…思えばそりゃあ髪も染めてピアスもしてりゃあ大人っぽく見えるわな。

俺が同級生だと知った途端、女の表情は今までで一番柔らかい表情になった。

それを見て、俺の表情も知らずのうちに綻んでいた。



「え、じゃ、じゃあ名前はっ!?

あ、私は白瀬…」


「陽那。だろ?」


「な、何で知って!!」



また目を丸くした。本当に面白い。

笑いを頑張って堪える。



「…高田 魁。」



俺がそう告げると、女の表情はすごいものとなった。


驚いているのか、笑っているのか。



 
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