LONELY MOON ―ロンリームーン―
「ずーっとね、気になってたの。
一回も見たこと無い…高田くんって、どういう人なんだろうなァ、って」
眩しい笑顔を俺へと向ける。
俺は未だにそれを直視することが難しい。
「そしたらあなただったなんて…良かった!!」
「…ワケ分かんねェ」
「んふふ」
いつのまにか俺の隣に座って、意気揚々と話しかけてきている。
変な女だ。明らかに見て俺は柄の悪い野郎だぜ?
こんな接し方をしてくる女は、美佐子とこいつくらいか。
「ねぇ、どうして教室に来ないの?」
「は?」
「私、いっつも隣が居なくて寂しいんだ
一番後ろの、窓際だから」
どうして?
俺みたいな奴が、ロクに学校に通ってるとでも思ってんのか?
俺に至っちゃ顔出すこと自体が珍しいっていうのに。
そう思う俺とは裏腹に、大きな瞳が、疑問そうに俺を一点に見つめていた。
「…だりィから」
「え~、楽しいよ?」
「…楽しい?」
「うん!友達と話したり、遊んだり!」
「…下らねェ」
ぽつり、と出たその一言が、女の表情を歪めた。
なんで、俺の一言だけでこんなに寂しそうにするんだ?
本当に、ころころ表情を変えやがるな、こいつは。
だが"下らない"。それは俺の本心だ。
トモダチ?そんな存在、もう忘れた。
遊びなんざ、もっと楽しいモンを俺は知ってる。
「…トモダチがいねェ奴には、縁がねェな」
「…そ、そんなことないよ!!
だって、」
あろうことか、女は俺の手をぎゅっと握り締めた。
不意打ち。
「私たち、もう友達だよ!」
そう言って、また笑った。