飼い主の溺愛

「悪い、驚かせたか…?」

そうやって、手を振り払ったことを

気にする様子もなく男の人が話しかけてくる。

私はなんて返せばいいかわからなくて、

更に小さくなって固まった。

「あー…えと、俺の名前は、椎名晴翔。俺とぶつかった後に君が倒れたからとりあえず俺の部屋に連れてきたんだけど…」

と、出来るだけ怖がらせないようにか、

ゆっくり優しく話してくれる。

いい人…なのだろうか…

少し自分の腕の力を緩めて隙間から彼を盗み見る。

イケメンさんだ…

黙ってずっと見ていると、

彼が私の視線に気づいて、

少し離れたところにしゃがみ込んで視線を合わせてくれる。

「えっと…名前は?」

遠慮がちに聞かれる。

私には彼が悪い人に思えなくて、

「白石…美夜…」

小さな声で返す。

「そっか、白石美夜ちゃんね!」

私が口を開いたことに安堵したのか、

すごく優しく笑ってくれる。

不思議と心が暖かさを感じる…

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