ことほぎのきみへ
『誰かがいてくれるだけでいいの』



『ほんの少しの時間で構わないの
誰かといることが大事なの』



『あの子には、傍に寄り添ってくれる誰かがいないと。じゃないと、その内……』


……


『それがあなたなら、私は安心できる』



……ひさとさんの家を2回目に訪れた時


鉢合わせた矢那さんが私に言った言葉


どうしてそんなに
私の事を信頼してくれるのか不思議で


出会って、まだ数回しか顔を合わせてないのに


何もしてないのに

なぜか
矢那さんは私の事をすごく気に入ってくれて

実の妹のように接してくれてる



『あなたは、ひさとと似てるから
同じ痛みを知ってるから』



『きっと…あの子の心を溶かしてくれる』



……
……
……


私がひさとさんと似てるから

同じ痛みを知ってるから

矢那さんはそう言ったけど…



……でも、矢那さん


私はそんな風に言ってもらえるほど

誰かの痛みを癒すことも
気持ちを楽にすることもできない


いつだって
相手のために自分に出来ることは本当に少なくて…


…………無力な自分が歯痒い




「………私に、出来ることは……」




『傍にいてあげて』




……ひとりでも平気そうなあの人を

ひとりにしないこと、一緒にいること




……でも




本当にその相手が私でいいの?


あの人はそれを望まないんじゃないかって


もっと他に適任な人がいるんじゃないかって



……自信がなくて



少し……不安になった
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