ことほぎのきみへ
「……あれ……」




「……だから、やめてください」

「そんなこと言わなくてもいいじゃん」

「興味ないので」



微かに聞こえた言い合うような声

声の方へ視線を向ければ


教室の隅の方の席

そこだけ避けるように
ぽっかりと空間ができてるその場所で

ふたり組の男に囲まれてるのは見知った顔


「……ゆうり」

「知り合い?
……絡まれてるっぽいね」


まわりにはたくさん人がいるけど
みんな柄の悪いその人達には
関わりたくないみたいで、素知らぬ振り

気にしてる人もいるけど
火の粉を被るのが怖いんだろう

ちらちらと視線を向けてはいるけど
結局助けには入らずそのまま


「…」


……タイミングが悪い

今の時間帯、お店にいるのは女の子だけ

それも少人数

しかも、お店がかなり混雑してるから
隅の方で言い寄られてる
ゆうりには気付いてないみたい


「……だから!
迷惑だって言ってるのっ」


片付けの最中だったんだろう
手にしたごみ袋をぎゅっと握り締めながら
苛立ったように、ゆうりが声を荒らげる


「ほら、フラれてんじゃん
いい加減にしろよ、お前さ」

「照れ隠しだろ?
怒った顔も可愛くて好きだわー」


どうやらふたり組の内
ゆうりにご執心なのは背の高い男の方で

分かりやすく拒否されても尚
嫌がってるゆうりにしつこくしてる
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