ことほぎのきみへ
「色々あって、好きだって事は
伝えられなかったけど」

「…色々?」

「自覚し始めた時にはもう
亜季はまなぶが好きで
まなぶも亜季を気にし始めてたし
それに…」


急に、苦虫を噛み潰したような顔を見せる
つゆき先輩

口調も少し険しくなる


「俺のファンだとか
よく分からないことを言ってきた女子達に
亜季が嫌がらせ受けてな」



つゆき先輩が話始めたのは
中学終わりの出来事


当時から人気のあったつゆき先輩

中学ですでに
ファンクラブなんてものが出来ていたらしい


休み時間になる度
顔もよく知らないような女子が
クラスにやってきて


じろじろ人を観察するように見てきたり

執拗に話しかけてきたり

勝手に写真をとったり


放課後の部活終わりにも

待ち伏せされたり

悪趣味なプレゼントを押し付けられたり


そんな


行き過ぎた好意に
つゆき先輩は迷惑していた


自分で注意すると
変に誤解されて、かえって悪化しまうので
教師に相談したのだそう


相談後、教師が対処してくれたおかげで
表面上は大人しくなった


だから、安心していた


けど


「まなぶ同様
当時から、一緒にいることが多かった亜季が
苛つきや怒りや嫉妬
そういった感情が爆発した女子達の標的にされた」


悪口陰口は当たり前

物を隠したり、倉庫に閉じ込めたり


そんなひどいことを、何度も何度も
彼女達は亜季に繰り返した


「俺は何も出来なかった
俺が関わると状況がさらに悪化したから」


悔いるように

無力な自分に苛立つように


声を、表情を動かすつゆき先輩
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