私のかみさま
ふわりと懐かしい香り




ぽんっと、頭を撫でる感触





「佐奈」





呼ばれた名前





「…さ、……さか、き……」


「ああ」



目の前にいるのは、間違いなく会いたかったひと


ずっと、焦がれていたひと



涙腺が決壊する



勢いのまま、抱きついた



「……っ、ごめん、ね……」



確かな感触に安堵しながら
私は、ずっと伝えたかった言葉を口にした



「………忘れてて……ごめんね」



榊は笑って、首を横に振った



「……表面上はそうだったとしても
忘れていたとしても
お前は消さずに、持っていてくれた」



「心の奥でずっと」



「俺の事を、あの頃の記憶を
覚えていてくれた」



あの頃の、あの日のように


何度も何度も、私の頭を撫でて
いたわるように、あやすように抱き締める
< 172 / 184 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop