溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~

彼を見送ったその日から、通話もメッセージも途絶えてしまった。突然、連絡が取れなくなった現実に慌てた私は、彼の勤め先である経営コンサルティング会社に連絡した。

けれど“田中実”という人物はうちの会社には存在しないと冷たくあしらわれ、結婚式をあげる予定だったお台場のホテルに問い合わせてみると、予約はすでにキャンセルされているという答えが返ってきた。

五百万円を渡した途端、姿を消した彼の正体は結婚詐欺師。

一瞬で恋に落ち、結婚というゴールしか見えなくなっていた私は、彼の両親に紹介してもらえなかったことも、エンゲージリングをプレゼントされなかったことも、おかしいとは思わなかった。

彼との出会いは運命だと信じて疑わなかった自分が腹立たしい。

取りあえずと思って立て替えた五百万円は、社会人になってコツコツと貯めたもの。全財産と婚約者を一瞬で失った私は、ひとりで住むには広すぎる恵比寿のマンションで涙を流した。

* * *

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