溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~
ブランドスーツを身にまとってもどことなく違和感がある私とは違い、彼はテーラードジャケットにノーネクタイというラフな格好にもかかわらず、凛々しくて風格が感じられる。
鏡に映る専務を見つめつつ、一日も早く彼の力になれるように努力することを改めて心に誓った。
「専務、ありがとうございました」
「どうしたしまして」
ブランドショップから出ると、お礼を言う。
彼は白いスーツ一着だけでは話にならないと言い、清楚な紺色のスーツと清々しい淡いブルーのスーツ、そして華やかなライトピンク色のスーツとそれぞれのスーツに合ったインナーとパンプス、髪をまとめる上品なバレッタまで買い揃えてくれた。
彼に何度も『ありがとうございます』と感謝の気持ちを伝えたけれど、言葉だけでは物足りない。
「あの、専務?」
「ん?」
「お口に合うかわかりませんが……私の手料理を食べてくれませんか?」
スーツ一式を買い揃えてくれた彼に、なにかお礼ができないかと考えた末に思いついたのは、手料理を振舞うことだった。
「うん。ごちそうになる」
ぎこちなく誘うと、彼がニコリと笑ってくれた。
誘いを速攻で受け入れてくれた気遣いをうれしく思いながら、スーツ一式が入ったショッピングバッグを持ってくれる彼と一緒に駐車場に向かって足を進めた。