溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~
彼の腕が背中に回り、ファスナーがゆっくりと下ろされる。
ワンピースが足元にストンと落ちて下着姿になった私の唇に、彼の唇が熱く重なった。私の味をたしかめるように、彼の舌が口内をさまよう。
唇の隙間から吐息交じりの声を漏らすと、彼が片手でブラジャーのホックをはずした。
私を見下ろす彼は、まだスーツ姿のまま。自分だけが裸同然なのは恥ずかしくて、急(せ)
くようにジャケットを脱がせるとネクタイの結び目に触れた。
なめらかな手触りがするネイビーのネクタイは、きっとシルクなのだろう。力を入れなくてもスルスルと簡単に解けた。そのままボタンに手をかけ、一気にワイシャツを剥ぐ。
細身だと思っていた彼の上半身は、ほどよく鍛えられている。その筋肉質の逞しい体に身をゆだねて快楽に溺れれば、あの出来事を忘れられる。そう思った。
けれど、ベッドにゆっくりと押し倒された私の脳裏に、“あの人”と情熱的に肌を重ねた夜が鮮明によみがえり、一瞬のうちに体が冷えていくのを自覚した。
結局、マティーを飲んでも、今日初めて会話を交わした彼に頼っても、忌々しい過去から逃れることはできないんだ……。