溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~
「……ごめんなさい」
同意の上でバーからこのスイートルームに移動した以上、拒むことはできない。だから私は、彼を受け入れ、果てるまで待つ覚悟を決めた。
それなのに……。
「俺の方こそ、嫌なことを忘れさせてあげられず、すまない」
彼はそう言うと、あわらになったままのふたつの膨らみを隠すように、毛布をかけてくれた。
この期に及んで泣き出した私を責めるどころか、気遣いを見せてくれる彼の優しさが心に沁みて、涙が目尻を伝った。
肩を震わせて涙を流す私の背中を、彼がゆっくりと擦ってくれる。その大きな手の温もりを心地よく思いながら、彼の胸の中で子供のように泣きじゃくった。
まぶしさを感じ、目が覚める。自宅の寝室とは違う高い天井を目にしたら、ホテルのスイートルームでひと晩すごしたことをすぐに思い出した。けれど私の隣に、昨夜出会った彼の姿がない。
もしかして泣き疲れて眠ってしまった面倒な私に嫌気が差して、もう帰ってしまったのかもしれない。