溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~
専務とはマンションで朝の挨拶をすでに交わしている。しかしプライベートと仕事は別。秘書として挨拶すると、彼が笑みをたたえて「おはよう」と返事をしてくれた。
窓から差し込む朝日に負けないくらい、その笑顔は爽やかだ。
「専務、本日のスケジュールですが午前十時から十一時三十分までよつば銀行本店で頭取と会談。午後一時から第一会議室で経営戦略会議。六時に取引先の吉野(よしの)様と会食です」
やや緊張しながらスケジュールを伝えると、「わかった」と専務がうなずいた。
報告が無事に終わり、ホッとひと息つく。
「よつば銀行への出発は九時四十分を予定していますので、よろしくお願いします」
「ああ。よろしく」
広海さんがスケジュールの補足をすると、専務が短い返事をした。
ついさっきまでは浮ついた態度を見せていた広海さんと、今の広海さんはまるで別人のよう……。
凛々しげに仕事をこなす彼に感心しつつ、専務室から退出する。
「俺、専務に同行するから留守番よろしく」
サポートにあたっている私は、専務の外出には同行しない。
自分ひとりで業務をこなせるのかという不安は尽きない。しかしそんなことを気にしては、サポートは務まらない。
「はい。承知いたしました」
不安を吹き飛ばすために笑顔を作り、明るく返事をした。