溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~
「うん。おいしい」
豚肉の生姜焼きを食べた彼が満足げにうなずいた。
「ありがとうございます」
今日の夕食のメニューは豚肉の生姜焼きに切り干し大根の煮物、そして冷奴と茄子のみそ汁だ。
「広海がいないと静かだな」
「そうですね」
切り干し大根の煮物を咀嚼(そしゃく)する音が聞こえてしまうのではないかと思うほど、ダイニングはしんと静まり返っている。けれど居心地の悪さは感じない。
ふたりで同じ時間を共有していることがなぜかうれしくて、頬を緩ませながら料理を口に運んだ。
「広海のことだけど、ひと晩で熱が下がったとしても明日は大事を取って会社を休ませようと思っている」
七月中旬に梅雨明けしてから、東京は猛暑日が続いている。ただでさえ体力の消耗が激しいこの時期に、広海さんに無理をさせるのはよくない。
「はい。それがいいと思いますけど……。明日の創立記念パーティーの同行はどなたにお願いしましょうか?」
専務は明日、取引先であるヤマギシフーズ株式会社の創立六十周年を祝う記念パーティーに招待されている。
同行するはずだった広海さんの代わりは、財前室長か秘書歴が長い社員がいいのではないかと思った。けれど彼の考えは違っていた。
「もちろん雨宮さんに同行をお願いしたい」
「えっ? 私?」
「ああ」
テーブルに向かい合って座る彼が、大きくうなずく。
期待に応えたいという気持ちはあるけれど、あいにく私はパーティーのような華やかな場には慣れていない。粗相をして足を引っ張るようなことがあっては、申し訳ないと思ってしまう。