溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~
定時の午後六時よりも三十分早い、五時三十分。私の腰にさりげなく手を回してエスコートしてくれた専務とともに社用車の後部座席に乗り込むと、フジオカ商事を後にする。向かう先はヤマギシフーズの創立記念パーティー会場である『ホテル・グランディオ東京』だ。
いつもは見送るばかりの社用車に自分が乗っていることが不思議でならない。
初めて乗った後部座席の黒皮のシートは座り心地がとてもよくて、油断したらすぐに居眠りしてしまいそうだと考えていると名前を呼ばれた。
「雨宮さん」
「はい」
やわらかな笑みをたたえた彼が、綺麗にラッピングされた長方形の箱を私に差し出している。
「これ、俺からのプレゼント。開けてみて」
「えっ? プレゼントって……どうして?」
「どうしてって、雨宮さんに似合うと思ったから」
ただ『似合う』という理由だけで、誕生日でもないのにプレゼントを用意してしまう感覚に驚き目を見張る。
唐突すぎる出来事が理解できずに慌てふためく私とは対照的に、彼の様子は普段となにも変わらなかった。
「ほら。開けてみて」
「あ、はい」
急き立てられた私がシルバーのリボンを解いて水色の包装紙を丁寧に剥がすと、グレーのジュエリーケースが出てきた。中にはきっと、ただの会社員である私には手が届かないような豪華な品が入っていると容易に想像できてしまうから困る。