【極上旦那様シリーズ】今すぐお前が欲しい~俺様御曹司と甘く危険な政略結婚~
親父の言ったことが信じられず、ただその顔をまじまじと見て黙る俺に、大谷さんがにこやかに補足説明をした。
「社長は今日綾香ちゃんと会ったそうだよ。秘書室でスーツのボタンをつけてもらったんだってさ」
親父が綾香にボタンをつけてもらった?
本当に?
あり得ないシチュエーションですぐに頭に浮かんでこない。
「よく知りもせず、破談にしようとした私が間違っていたよ。興味深いお嬢さんだ。大事にしなさい。お前も無事でよかった」
フッと微笑して父は病室を出て行くと、大谷さんが俺の肩をポンと叩いた。
「社長が認めてくれてよかったじゃないか」
「なんだか気味が悪いですけどね」
小さく笑えば、大谷さんは手に持っていた紙袋を俺に渡した。
「これ蒼士くんと綾香ちゃんの着替え。あとスマホとかも入ってる」
プライベートの時は大谷さんとは名前で呼び合う。
「直史さん、ありがとうございます」
礼を言えば、彼は優しく微笑んだ。
「仕事のことは心配いらないから。じゃあ、僕も帰るよ」
「ええ。なにかあれば連絡ください」
ドアまで彼を見送ってまた綾香の元に戻り、その手をギュッと握る。
すると、彼女が寝返りを打った。
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