【極上旦那様シリーズ】今すぐお前が欲しい~俺様御曹司と甘く危険な政略結婚~
「最後の仕上げにさっき刻んだパセリを振る」
そう言って盛りつけた皿を近くのダイニングテーブルに運ぶ。
そして、シャンパンを出してきてグラスに注いだ。
「これは、就職祝い。スープとサラダがあればもっと良かったけど」
火事があって塞いでいるのにシャンパンなんて不謹慎かと思ったが、少しでも気分を変えて彼女を元気づけたかった。
「いいえ。こんな短時間でパスタを作るなんて、凄いですわ。氷堂さま、シェフになれますわよ」
そんなたいしたものは作っていないのだが、彼女は尊敬の眼差しを俺に向けた。
そう言えば、綾香は料理が苦手だったな。
調理実習の時は彼女の親友がいろいろと手を貸していたようだ。
「綾香だけのシェフにならなってもいいけどね。じゃあ、食べよう」
席につくと、彼女も俺の前に座った。
考えてみたら、婚約者なのに綾香とふたりで食事をするのは初めてだ。
いつも家族か、友達が一緒だったしな。
「新婚みたいだな」
思ったことをそのまま口にしたら、じっとりと俺を見て彼女は文句を言う。
「不吉なことを言わないでください」
「最近、俺への敵意を隠さなくなったね。まあ、愛憎は紙一重って言うし、そのうち綾香は俺のことを好きになると思うよ。就職おめでとう」
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