【極上旦那様シリーズ】今すぐお前が欲しい~俺様御曹司と甘く危険な政略結婚~
グラスを掲げれば、彼女は仏頂面でグラスを手に持ち、シャンパンをゴクゴクと一気飲みする。
それから、綾香はひたすら黙ってパスタを食べ続けた。
これは、俺の発言に怒っているな。
だが、暗く沈んでいるよりは全然いい。
食事を終え、後片付けを綾香としていると、フォークが床に落ちて、俺も彼女も屈んで取ろうとした。
だが、その時綾香の足の怪我に気づく。
くるぶしの皮がめくれて赤くなっていた。
「これ……火傷?」
そっと触れて問えば、彼女は痛みを感じたのか顔をしかめた。
「……なんでもありませんわ」
「なんでもないわけないだろ。火事の時に火傷したのか? なんの手当もしてないじゃないか」
つい心配になって強い口調で注意すると、彼女はカッとなった。
「氷堂さまには関係ないでしょう!」
……しまった。
こういう時は厳しく言ってはいけない。
余計反発されるだけだ。冷静にならなければ。
「関係あるよ。ちょっと、そこに座ってて」
優しく声をかけて、彼女を椅子に座らせると、救急箱を取ってきて手当をする。
「じ、自分でやりますから」
あたふたする綾香の頬はピンクに染まっている。
「俺は医学の心得があるんだけど」
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