【極上旦那様シリーズ】今すぐお前が欲しい~俺様御曹司と甘く危険な政略結婚~
二十分程でタクシーは病院に着き、支払いを済ませて、病院の五階にあるICU病棟に向かう。
途中、ICUの側にあるナースステーションで挨拶すれば、中にいた看護師は「一時間程前に意識が戻られましたよ。少しなら会話をしても大丈夫です」と微笑んだ。
そこへ百九十センチくらいの長身の男が現れ、俺に近づき小声で言う。
「蒼士さま、今のところ花山院秋人は現れていません」
この男は坂崎悠人という。氷堂家に代々仕えている者で、俺の手足となって働いてくれる。
「そうか。おじさんの意識が戻ってよかったよ。坂崎のお陰だ」
ポンと彼の肩を叩くと、近くで警備している警官に一礼する。
他の病棟に比べ、ここの警備は厳重。
二名の警官が常駐している。
ICUの入り口でマスクをして手を消毒し、病室に入った。
ここに来るのは二度目だ。
一度目はチベットから帰国してすぐに空港からここに来た。
患者のいるベッドの周りはビニールのカーテンで覆われていてビニール越しに声をかける。
「おじさん、蒼士です。わかりますか?」
穏やかに声をかければ、その人……綾香のお父さんは俺の方に目を向けた。
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