【極上旦那様シリーズ】今すぐお前が欲しい~俺様御曹司と甘く危険な政略結婚~
本当のことを言えば不安がると思い、綾香の従兄のことは触れずにいたのだが、彼女は「……はい」とムスッとした顔で返事をする。
"子供じゃありませんわ"と面と向かっては言えず、俺をじっと見て目で抗議する彼女。
「ちゃんと守ってよ。あと、今日は大谷さんか藤原に送ってもらうこと」
綾香に声を潜めて念を押したその刹那、ポケットの中のスマホがブルブルと震えた。
スマホを取り出してみればメールが来ていて、内容を確認し、みんなに一声かける。
「ごめん。ちょっと急用が入った。鈴木さん、今日は戻れそうにないから、後の予定は全部キャンセルして」
綾香にそう頼めば、彼女は「外出されるなら、社用車を手配しますけど」と俺を見た。
「いや、いい。帰りがいつになるかわからないからタクシー呼んで」
口早に言って席を立つと、綾香の返事も待たずにオフィスを後にする。
途中副社長室に寄ってビジネスバッグを手にして正面玄関に向かい、玄関前に停まっていたタクシーに乗り込んだ。
「天聖大学病院までお願いします」
運転手に行き先を告げると、後ろのシートに持たれかかり、祈るような気持ちで手を組む。
メールは氷堂家の者からだった。
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