可愛い女性の作られ方
なんだかよくわからないまま、貴尋の家を出た。

「どういう、こと……?」

「さあ?
でも、とりあえず、優里との結婚はOKってことですよね?」

「……たぶん」
 
ふたりで首を捻りながら、また手を繋いで駅への道を歩く。
……この先何度も、通ることになったこの道を。


後日。
お義父さんから連絡があった。
詳しいことはわからないけれど、お義父さんは昔した恋愛で凄く後悔していることがあるらしい。
そのときのことに、私たちが重なって見えたんだといっていた。


貴尋の家に行った翌週末の金曜日は、篠崎班の解散会。

「結局加久田に、篠崎さん攫われちゃうんだもんなー」

まだ会社には報告していなかったけど、美咲ちゃんにだけは結婚のこと、教えていた。

「あ、でも、明日篠崎さんちにいって、反対されれば結婚、なくなりますよね!?」
 
……うん?
なんで美咲ちゃん、そんなに嬉しそうなんだ?

「そんなに私が結婚するのが嫌か?」

「えーっ。
篠崎さんが幸せになるのは嬉しいですよ?
でも、相手が加久田なのが気にくわない」
 
美咲ちゃんはそういうと、貴尋に枝豆の殻を投げつけた。

「なんで気にくわないんだ!?
ってかみんな欺されてるよな!
優里よりおまえの方が中身おっさんなのに!」

「うっさい、加久田。
私は上手に猫かぶってるから大丈夫なの。
あーあ、私が篠崎さんと結婚して、幸せにしてあげるつもりだったのにー」
 
あー、美咲ちゃん?
その気持ちは大変嬉しいが。
……なんかちょっと、引っかかるぞ?

美咲ちゃんにいじられている貴尋を見ながら、酒を飲む。
こんな楽しいことも今日でおしまいか。

「あ、篠崎さん!
これからもこのメンバーで時々飲みましょうよ!
遊びにいっていいなら、家いきますし!」

「美咲ちゃん……?」

「なんだかんだいっても、私たちって相性ばっちりじゃないですか?
なのにこれで終わりって惜しくないですか?」

「……そう、だな」
 
……あれ?
なんでだろう?
視界が、滲む……。

「ああもう。優里、なに泣いてるんですか?
美咲ちゃんも優里を泣かすな」

「ごめんなさい、篠崎さん。
私なんか、いいましたか?」

「ううん。
嬉しかっただけ。
また、三人で飲もうな」
 
もうすぐ私の旦那さまになる貴尋。
私のことを好きでいてくれる美咲ちゃん。
私っていままで、すっごく恵まれた環境で仕事していたんだな……。


貴尋に支えられて家に帰る。
< 41 / 45 >

この作品をシェア

pagetop