可愛い女性の作られ方
「優里。
飲み過ぎです。
……まあ、今日は仕方ないですけど」
 
お小言たれつつパジャマに着替えさせてくれて、ベッドに入れられる。

「たかひろー」

「なんですか?」

「あのねー?
すっごく、すっごく、しあわせ、だよ?
ありがとー、たかひろ」

「どういたしまして」

顔が近付いてきて……チュッとキスされた。
髪を撫でられながら私は、幸せな眠りへと落ちていった。


翌日。
パンツスーツで実家に帰るつもりだったんだけど貴尋に止められて、結局このあいだのワンピースで実家に帰った。
貴尋と一緒に実家に帰ると、案の定にやけ面の両親が待っていた。

……警戒していた、お赤飯と鯛の尾あたま付きと一緒に。

いや、三十過ぎのひとり娘が男を連れて帰るんだから嬉しいのはわかるけど。
いくらなんでも喜びすぎじゃない?

しかも連れてきたのが七つも年下の男とわかると、もう大騒ぎ。 あっという間に親戚連絡網に回され、気が付いたら近所に住んでいる親戚が集まって宴会が始まっていて、ふたりで苦笑いしているしかなかった。


「おはよう、貴尋」

「おはようございます、優里。
……この部屋、なんですか?」

「私の、書庫」

……結局昨日は、実家に泊まる羽目になった。
宴会は延々と続き、気が付いたら終電がなくなっていた。
というか、いまからこんなんで、結婚式の時ってどうなるのか、宴会好きなうちの一族が心配です。

朝起きて私は、久しぶりに実家の書庫を開けていた。
小学生の時から買いためた本を詰め込んでいる、部屋。

「凄いですね。会社の資料室みたい」

「だろ?
床も抜けないように補強工事したし、本棚は業務用だ」

「全部この本、読んだんですか?」

「ああ。
ここに置いてあるのは全部読んだ本。
……あ、心配しなくていいぞ。
結婚してもここに本を置くことは、了解を取り付けた」

「……それは安心です」
 
ちょっと安心したような顔している貴尋。
……いつかこの書庫を、貴尋に見せたいと思っていた。
呆れられるかと思ったけど、意外と感心しているみたいでほっとした。


四月になって。
貴尋と美咲ちゃんは私の元を離れていった。

……といっても、同じ課内に入るので、顔は合わせるし、たまに話したりするのだけど。
それでもやっぱり、ちょっと淋しい。
今度私の元には美咲ちゃんの同期の女の子が事務として、他班で二年実績を積んできた男がふたりと、全くの新人がふたりが入ってきた。

……うん。

人数が増えてやっとまともな班になるのは嬉しいと思っていたけど、これって確実にいままでより仕事増えてるよな!?
彼らが貴尋並みに有能であることを祈るばかりです……。
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