空に向かって
中には、レジでお会計をしている女。
「わかったか?」
そう言われた。
「…はいはい」
つまらない。本当につまらない。
秀虎は今からその女をバイクの後ろに乗せて学校まで届けるんだろうね。
私もおとなしくコンビニにいってご飯を買おう、秀虎にじゃあね、と言おうとした時だった。
「待った?」
澄んだ声が駐車場に響く。
誰の声、なんて分かり切ってる。
長い黒髪を揺らしながら、今日は本当に暑いのかな?なんて錯覚させるくらいに顔には汗の一滴も見せない女。
「千代、おせーよ」
「ごめんね」
そんな会話が目の前で繰り広げられている。
千代、と呼ばれた私の大嫌いな女は私の存在に気がつき口をキュッと一文字に結ぶ。
先ほどまでの笑顔が嘘のように無表情になる。