この空の下
翌朝。

結局朝まで一緒に過ごし、アパートへ向かう車の中。


「ねえ」

「ん?」

声をかけた私も、答えた隆哉も次の言葉が出てこない。

甘いムードなんてどこにもなかった。

かといって悲しい訳ではない。

好きな人が私を好きでいてくれたと知り、私自身も彼に飛び込んでいくことができた。

本当なら幸せの絶頂。


「でもねえ」

無意識で口を出ていた。


「そんな顔するな。ちゃんとけじめをつけるから」

隆哉は真っ直ぐ前を見たまま、穏やかに言った。

その強い眼差しに決意のような物が感じられて、それ以上は何も言えなかった。
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