君を待った七年間〜一匹の犬の物語〜
「え?ヨースケ、まだ帰って来てないのか?」

お父さんとお母さんがそんなことを話してる。大丈夫だよ、ヨースケくんはきっと帰って来るよ。

僕はそう言いたくて、二人に尻尾を振る。でも二人は気づいてくれない。心配そうな顔のまま。

その時、電話が鳴った。お父さんが受話器を取る。しばらくすると、お父さんの顔は真っ青になり始めた。体中が震えている。

「……警察に行こう」

お父さんとお母さんは、どこかへ出かけてしまった。僕は何もわからず、首を傾げる。警察はヨースケくんに教えてもらった言葉の一つだ。悪い人を捕まえる人たちらしい。でも、どういうことなんだろう……。

電気の付いていない暗いリビングで、僕はウトウトしながらお母さんたちの帰りを待つしかできない。

真夜中、お父さんとお母さんが帰って来た。僕は尻尾を振って二人を出迎えに玄関に走る。でも、そこにヨースケくんはいない。二人の顔も、笑顔じゃない。

「……アポロ、聞いて……」
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