【極上旦那様シリーズ】俺のそばにいろよ~御曹司と溺甘な政略結婚~
「本当に嫉妬などなさらないで大丈夫なんですよ。社長は奥さまを溺愛していますから。あ、時間が」

 辻野さんは時計を見て、バッグからエメラルドグリーンの革の名刺入れを取り出した。そこから一枚名刺を出して私に渡す。

「いつでも電話をかけてくださいね。今日はこれで失礼します」
「お時間を取らせてしまい申し訳ありませんでした」
「いいえ。では失礼します」

 優しく微笑みを浮かべた辻野さんが出ていき、玄関のドアが静かに閉まった。

 その途端、私は冷たい床の上にくずおれた。涙が溢れ出てきて、両手で顔を覆う。

 ここのところ泣いてばかりだ。でも、涙は止まらない。

 柊吾さんに愛している人がいなくて安堵した反面、彼を疑ってしまったことに罪悪感に襲われる。

 考えてみれば、柊吾さんは私を愛してくれる態度はずっと変わらなかったし、いつだって私のことを考えてくれていた。

 最愛の人を疑っていた自分が嫌になり、しばらく冷たい大理石の床の上から動けなかった。


 その夜、柊吾さんは二十時過ぎに帰宅した。

「お帰りなさい」

 リビングで出迎えた私を見て、柊吾さんの眉間に皴が寄る。

「具合が悪い?」
「少し頭痛がするだけ」

 泣いたせいで頭があれからずっと痛かった。だけど、いつ妊娠してもいいように薬は飲まないと決めている。

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