【極上旦那様シリーズ】俺のそばにいろよ~御曹司と溺甘な政略結婚~
 乗り込んだエレベーターはノンストップで二十五階へ到着し、彼の泊まるスイートルームへ歩を進める。

 その間、私は強い緊張に襲われ、両手をギュッと握っていた。私の緊張が伝わったのか、八神さんもなにも話さなかった。

 ドクドクと鼓動が大きく打ち、口から飛び出そうだ。

「着替えてくるから、冷蔵庫からなにか飲んでいて」

 室内に入ると、私の返事を待たずに、八神さんは左手の部屋へ消えていった。

 私は肩の力を緩ませ大きく深呼吸を繰り返したのち、ソファに座る。

 もう迷わない。落ち着かなきゃ。

 私は別のことを考えることにした。

 そういえば、八神さんはどうして実家に泊まらないの……? 実家に泊まればこんなバカ高い宿泊料を払わなくていいのに。

 五分くらい経っただろうか、八神さんが戻ってきた。

 カジュアルなクリーム色のジャケットとモスグリーンのストレートパンツという姿は、モデル雑誌の一ページから出てきたように洗練されている。

「なにも飲まなかったの?」
「喉は乾いていなかったので」

 八神さんは私の対面のソファに腰を下ろし、長い足を組む。

「……あの、あなたの考えは変わっていないですか?」
「嫌だったら別れてもいいっていうこと? それだったらもちろん、考えは変わっていない」

 八神さんはそう言って私の答えを待つ。

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