対立相手が婚約者。それって何かの冗談ですか?
「ついよそ見をしていて、足元がおろそかになってしまいましたわ。弁償します。おいくら?100万円あったら足りるかしら」

ショックでぎこちない笑顔を作るだけで精一杯の恵巳。

「いえ、大丈夫です。お気になさらず。

拡樹さん、ちょっと洗ってきます」

顔を上げることのないままそう告げた。
すぐに拡樹が後を追おうとしたが、1人で大丈夫だと制止した。

ダンスフロアには拡樹だけが残った。
去っていく恵巳の姿など、3人は一度も見ることをしなかった。
< 102 / 157 >

この作品をシェア

pagetop