対立相手が婚約者。それって何かの冗談ですか?
ドシャ降りの雨の中、傘もささずに一歩、また一歩と屋敷から遠ざかる。最後の勇気を振り絞って、携帯画面の拡樹の名前を叩いた。だが、聞こえてきたのは機械的な音声。その声は、その形態が使われていないことを冷たく知らせた。
腕の力が抜けてだらんと下がる。もう何も信じられなかった。強まっていく雨が濡らしていく。頬を濡らすのは雨なのか涙なのかわからなくなるなるほど雨に打たれた。
夜道を照らすライトが前方で止まる。ドアの閉まる音で誰かが降りてきたのに気づいた恵巳だが、立ち上がる気力は残っていなかった。
「そんなところにいたら風邪引くぞ」
蓮は自分が濡れることなど構わずに恵巳を抱きしめた。
「…やまやん、私、」
「いい。今は何も話さなくて良いから」
肩を震わせてただ俯く恵巳を、ただひたすらに抱きしめていた。
また一段と強くなる雨。そんな雨音に隠された足音が、駆け足で近寄る。
だが、2人の姿が見えたところで急に止まった。
じりじりとした後ずさりには、大きな戸惑いが見え隠れしている。
力が抜け、悲しい諦めを含んだ足音は、静かに2人から遠ざかっていった。
腕の力が抜けてだらんと下がる。もう何も信じられなかった。強まっていく雨が濡らしていく。頬を濡らすのは雨なのか涙なのかわからなくなるなるほど雨に打たれた。
夜道を照らすライトが前方で止まる。ドアの閉まる音で誰かが降りてきたのに気づいた恵巳だが、立ち上がる気力は残っていなかった。
「そんなところにいたら風邪引くぞ」
蓮は自分が濡れることなど構わずに恵巳を抱きしめた。
「…やまやん、私、」
「いい。今は何も話さなくて良いから」
肩を震わせてただ俯く恵巳を、ただひたすらに抱きしめていた。
また一段と強くなる雨。そんな雨音に隠された足音が、駆け足で近寄る。
だが、2人の姿が見えたところで急に止まった。
じりじりとした後ずさりには、大きな戸惑いが見え隠れしている。
力が抜け、悲しい諦めを含んだ足音は、静かに2人から遠ざかっていった。