拾ったワンコが王子を連れて来た
「んーやっぱりうちが良いよなぁ。
ねぇ奥さん?」
帰ってくる途中、役所に寄り二人で婚姻届を提出してきた。これで、私達は夫婦になったのだ。
帰りは行きと違って、わりと車の流れも良く思っていたほど時間はかからず帰ってこれた。と言っても、長い時間車に揺られて帰れば、疲れも出る。況してや、朝から3ラウンドしての出発、疲れもハンパないはずなのだが…
帰って早々彼は私の唇を奪い、洋服を脱がしにかかる。
「んっ…ちょ、ちょっと待って、ワンコロ迎えに行かなきゃ?」
私と同じ事して、その上、長い時間運転して来たのに、この人はどれだけ疲れ知らずなの?
「ワンコロは、後で柊真が送って来てくれるったさ! だから楽しむ時間は、十分あるよ?」
「ホントに良いの?」
ワンコロは、ゼネラルマネージャーに預かって貰ってる。
稀一郎さんの実家へ向かう日の朝、ゼネラルマネージャーがうちに来た事に驚いたのは勿論だけど、稀一郎さんがゼネラルマネージャーにワンコロの世話を頼んだと聞いて、私は更に驚いた。
「あ、あの…ほ、ホントに…大丈夫なんですか…?」
「そんなに心配?」
「あっワンコロが心配なんじゃなくて、お仕事忙しい方だから…」
「真美さんだけだよ?
俺が忙しい事知ってるの?
稀一郎は、俺が忙しいなんて、思っても無いからね?」
そんな事無いと思うけど…
「ゼネラルマネージャーである俺に、急にフロントに立てとか、夜勤しろとか、ワンコロを迎えに来いって、俺を顎で使うヤツは他に居ないからね?」
ゼネラルマネージャーを顎で使うなんて…
ホントなんて人なの…
って言っても、全て私が関わってるんだけど…
「すいません…」
「でも、ホントにアイツで良いの?
アイツ結構めんど臭いよ?」
一緒に暮らす様になって、いままで知らなかった彼の一面を知った。
結婚すると決めてからは、面倒くさいと思う一面も見せてくれる様になった。
だけど、それも心を許してくれてるからと思うと、嬉しくも思う。
「ええ知ってます。
でも、彼の側に居るって決めましたから」
ゼネラルマネージャーには、物好きだと言われたけど、そのめんど臭い彼を片腕にしようとしてるゼネラルマネージャーも、十分物好きだと思う。
「じゃ、頑張っておいで?
変に気張らなくても、そのままの君で良いから」
「有り難うございます」
その後、支度を済ませて出発したのだ。