拾ったワンコが王子を連れて来た
「お世話になりました」
「そんないに慌てて帰らんでも、良かがや?」
「そうやわいね」
お父さんとお母さんに見送られ、私達は今から自宅へと帰る。
「すいません。明日は二人とも朝から仕事で…
今度は、もう少しゆっくり出来る様に、休み取って来ますので…」
「約束やがね?」
「はい」
「真美さん、私はまだ諦めた訳やないがや」
「え?」
「若女将になる事やがね!
あんたには、ええ心がある。
お客様を思う心や。おもてなしは、心や。
心の無いものはおもてなしにはならん。ただのお節介や」
心の無いものはお節介…
確かにそうだ。
「有り難うございます。私、頑張ります!」
「ほんまかいね?」
「あっ…えっと…それは…」
ホントかと喜ぶお母さんに困っていると、お姉さんが助けてくれる。
「冗談よ!
私が継ぐって約束したんだから、安心して?
それから…律子の事有り難う。
あんな風に、言ってくれるなんて思ってなかったから、ホントに嬉しかった」
お姉さん…
「母の言う通り、あなたには人を幸せする、力がある。ホテルと旅館のサービスは違っても、おもてなしの心は同じよ?
あなたなりのおもてなしで、頑張って?」
「有り難うございます」
帰りは、一緒に車で帰ろうと提案したが、早速、女将の特訓が始まるから、このまま残るとお姉さんは言った。
「近い内、マンション引き払いに行くから、その時また会いましょう?」
「はい。必ず」