拾ったワンコが王子を連れて来た

体調も戻ったし、仕事に戻ろうとすると、送って行くから今日はこのまま上がれと、生田さんに言われてしまった。

冗談じゃない。
怪我して動けない訳じゃあるまいし、ちょっと過呼吸になったくらいで、仕事を放り投げる事は出来ない。

「大丈夫です。 仕事に戻ります」

「真美!」

「今度、下の名前で呼んだら、家から放り出しますからそのつもりで!」

「真…」

生田さんは、再び私の名前を呼ぼうとしたのだろう。私が睨むと、彼は言葉を飲み込んだ。
絶対、私達の関係を知られる事があってはならないのに、もう既に知られてしまった。
さっちゃんの事だから、話せばわかってくれると思う。
でも、これ以上広まらない様に、生田さんの危機管理の無さには、釘を刺しておくべきだと思う。

更衣室へ戻る道すがら、本当に大丈夫なのかと、さっちゃんは、心配して何度も聞いてくれた。

「本当に帰らなくて平気?」

「平気、でも少しお腹空いたかな?」と笑う私に、さっちゃんも安心したのか “ 爆弾おにぎりあるよ ” と笑って言った。

彼女は夜勤の時には、具が何種類か入った爆弾の様な大きなオニギリを、作って持って来てるのだ。

「有難う。でも、良いの食べちゃって?」

「大丈夫。後で地下のコンビニで買って来るから! その代わり、今度美味しいものご馳走して? その時には、生田さんとの話も聞かせてよ?」

「う、うん…」

さっちゃんには、生田さんとの事を話すと言ったけど、ゼネラルマネージャーとの事もあるから、どこまで話して良いのか、勝手には決められない。明日にでも生田さんに相談しないと…




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