拾ったワンコが王子を連れて来た
生田さんに何が有ったのかは判らないけど、朝食の準備でもして待ってよう。
律子さんの弟さんには、明日にでも話しすれば良い。それまで、携帯の電源切ってれば、なんの問題もないだろうし!
シャワーを浴びて、冷蔵庫の中にある物と相談して、食事の支度をしてると、生田さんとワンコロが、散歩から帰って来た。
「お帰りなさい。 ご飯出来てるよ?」
生田さんは無言のまま、席に着いて食事を始めた。
私は料理は嫌いでは無いが、得意というわけでも無い。寧ろ苦手な方かもしれない。
特に、生田さんの作る料理を食べる様になってから、自分は料理が下手だと気付かされた。
「やっぱり、美味しく無い?」
いつもより箸の進みの悪さに声を掛けてみたが、生田さんは何も応えてくれない。
生田さんの実家は有名な旅館を営んでいて、生田さんのご両親は、旅館の女将と板長とあってとても忙しく、生田さんは小学生の頃から、自分達の食べる分は自分達で作っていたらしい。
だから、私より手際もいいし、料理人の息子とあって、私より全然舌も確かなのだ。
「無理して食べなくて良いからね?」
私の言葉に、生田さんは、とうとう箸を置いた。
いつもなら、多少酷くとも全て食べてくれるけど、今朝のは、箸置くほど酷いんだ…
もし…もし生田さんと結婚するなら、料理教室にでも通わないといけないかも…なんて考えていると、自分の耳を疑う事が起きた。
「今日…ここ出て行くわ?」
突然の言葉に私の耳は、彼の言葉が聞き取れなかった。
えっ! 今なんて言ったの?
「ごめん。 なんて言ったか聞こえなかった。
もう一度言ってくれる?」
「ワンコロ連れて、ここ出て行く!」
「急になんで?」
生田さんは、私に迷惑掛けてるから出て行くと言う。
「誰も迷惑なんて言ってないじゃ無い?」
あ…昨日、追い出すとか言ったから?
「昨日、私が追い出すって言ったのは、ゼネラルマネージャーとの約束で、他の人に私達の関係がバレると困るからで…迷惑だから追い出すって言ったんじゃないよ?
生田さんだって、ホテルのスタッフにバレると困るでしょ?」