エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない
そんな、新人としては重たすぎる荷を背負わされてスタートを切った芝浦は、見事に周りの期待に応え、入社から三年三か月が経った今、ホープどころかエースの座まで脅かす存在になってしまったのだからすごい。
『芝浦と同期って言うと、みんな目キラキラさせるんだもん。おまえ今、モテてモテて仕方ないだろ。去年一年で振った女の数とかすごそう』
いつかの飲み会で、谷川くんがそう笑っていたけれど。
『ほとんどが名前も知らないような相手だし、待ち伏せされても飲みに誘われても面倒でしかない。まぁ、悪いとは思うし、あとでややこしいことになっても困るから、やんわり断ってるけど』
芝浦本人からしたら、結構面倒くさそうだった。
たしかに、名前も知らない相手に一方的に知られていて、しかも好意を寄せられていたら、そしてそれがひとりやふたりじゃなかったら、嬉しいと思うよりも困るのかもしれない。
悩みにすらなってしまうほどに。
〝悩み〟といえば、最近、私にも悩みがふたつほどあり――。
まずひとつ目は、暇つぶしに内見にくる独身の中年男性で、名前を小金井さんという。
いつもスーツ姿の小金井さんは、中小企業の社長をしているらしい。五十歳という年齢の割には若く見えるし、ルックスだってスタイルだって悪くない。
外見や持ち物にお金や気を遣っているのはぱっと見でわかるし、婚活パーティーに行けばさぞモテるだろうと思うのに、一か月に十日もないオフの日、小金井さんはパーティー会場の扉ではなく不動産屋の自動ドアを楽しそうにくぐってくる。
見た目はまんま紳士で、最初は印象もよかった。でも月一来店が一年も続けば、持っていた好印象なんて簡単に嫌悪感に塗り替えられていた。
パリッとした高そうなスーツも、奇抜なネクタイを着こなせてしまう洒落た髪型も、年齢の割にしっかりと引き締まった体も、もう全部がうっとうしい。
……なんてことは、当然口にも顔にも出さないけれど。