独占溺愛~クールな社長に求愛されています~
「社長とふたりで飲みに行ったんだよね~。そのとき、なにかあったのぉ?」

 真梨子が笑いながら詩穂に体をすり寄せ、詩穂は慌てて左手を振った。

「な、なんにもなかったですっ」
「ホントに~?」

 真梨子のニヤニヤ笑いが大きくなる。

「ホントですって!」

 一晩一緒に過ごしたのに、本当になにもなかったのだ。むしろ、なにかしたとすれば詩穂の方だ。彼の前で吐いたあげく、床で寝たのだから。

 そのとき、ちょうど次の料理が運ばれてきて、真梨子が「きゃー、おいしそう!」と声を上げた。彼女の注意が大皿のパスタに向いて、詩穂はホッとした。



 それからメインにキノコソースのかかった牛肉のソテーを、デザートに上品な甘さのパンナコッタを食べてお開きとなった。おいしい料理を堪能してスパークリングワインと赤ワインを飲んで、詩穂はふわふわした幸せな気分だった。

「これからもう一軒どう?」

 レストランを出たところで啓一が数人の社員に声をかけて、バーに飲みに行く算段がまとまった。

「小牧はどうする?」

 蓮斗に声をかけられ、詩穂は真梨子が行くなら行こうかと思ったが、当の真梨子は首を横に振った。
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