独占溺愛~クールな社長に求愛されています~
「はい、どうぞ」

 蓮斗が口を開けてパクリと食べる。詩穂がフォークを引き抜き、蓮斗は目を細めた。

「うん、確かにうまい」
「でしょ~。定食食べてきたのを後悔した?」
「少しだけな」

 蓮斗がニッと笑い、詩穂もつられて微笑む。アイスティーを飲んで大きく息を吐き出したら、ほんわりと温かな気持ちに包まれた。



 パンケーキを食べ終えると、ファッションビルをぶらぶらして時間を潰し、映画館に向かった。蓮斗がすでにチケット代を払ってくれていたので、詩穂はポップコーンとアイスコーヒーを彼に奢った。自分用にはキャラメルポップコーンとミルクティーを買う。スクリーンは広く、蓮斗が予約してくれた席は見やすい真ん中の席だった。

「映画楽しみだな。この俳優、そういえば大学時代、大好きだった」

 詩穂は席に座ってパンフレットを広げた。嬉しくなってつい買ってしまったものだ。

 右側の席から蓮斗が懐かしそうに言う。

「おまえが女友達と映画に行くってはしゃいでたのを覚えてるよ」
「そうなの? 須藤くんってよく人を観察してるんだね。やっぱ上に立つ人は視点が違うのか」

 妙なところに感心してしまい、蓮斗に額を軽く小突かれる。
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