私が恋を知る頃に
重たい鎖
私はまた目を瞑る。

お腹の管のせいで動けないから、最近は眠るか考えるかばっかりだ。

考えてると疲れるし、自分の出来なさが悲しくなってくる。

"大丈夫だよ"って言ってもらえても、これまで否定され続けたからか、簡単にはこのマイナス思考は消えそうにはなかった。

嫌な夢、見ませんように。

昔から、心地よく眠れることだけが唯一の安心と楽しみだった。








「穂海」

ここ、どこだろう

すごく暖かい

「これから2人で頑張っていこうね。あんな男なんていない方がきっと幸せよ。大丈夫。私たちならやれるよね。」

心地いい声

優しくて穏やかな春の空気みたいな温かさ

こんなに心地いいところあったんだって思うのに、どこか懐かしい

なんでだろう

「穂海は小さくて可愛いね。ふにふにでやわらかくて壊れちゃいそう。お母さん、穂海のこと頑張って守るからね。2人で一緒に生きていこうね。」

そっか、お母さんの声

これは、ずっと昔の夢?

お母さんまだ優しいな

いいな

この頃に戻りたいな

なんで、こんなことになっちゃったんだろう

幸せはなんの前触れもなく崩れるんだ
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