俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
 
その週の土曜日。

私は周防さんに車を出してもらって、自分のアパートへ荷物を取りにきていた。

「もういっそ全部運び入れちゃえよ。必要なものがあるたびチマチマ取りにくるの面倒だろ。うちの収納結構空いてるから、全部入りきると思うぞ」

「で、でも……大きいものとか運ぶの大変だし、その……」

「だから、引っ越し業者に頼んでそれを一括でやっちゃえって言ってんの。物置状態で家賃払い続けてんの馬鹿みたいだろーが」

部屋にある資料を段ボールにしまう手伝いをしながら、周防さんが呆れたように言う。

彼の言うことはもっともなので、私はうまく反論できないまま「い、いずれ……」と口ごもった。

実にまったく周防さんの言う通りで、ほとんど帰ってきていないアパートに家賃を払い続けている現状は無駄だと自分でも分かっている。

けれどそれでも私が賃貸の解約をしないでいるのは……いつ惚れ薬の効き目が切れるか分からないからだ。

この同棲は惚れ薬の効果の上に成り立っている。つまり薬の効果が切れたらあっさり破局したあげく、周防さんのマンションを追い出される可能性があるのだ。

そのときアパートを解約してしまっていたら、私は帰る場所がなくなってしまう。

万が一にいきなり宿なしになってしまわないため、私はアパートの解約が出来ないでいた。

「んで、後は? このからっぽになった本棚も持ってくか?」

「あ、車に乗りそうならお願いします」

なんだかんだブーブー言いつつも、私の意志を尊重しつつ手伝ってくれる彼に恐縮しつつも感謝する。

周防さんは資料の入った重い段ボール箱を数箱とからになった本棚を玄関まで運び、「ちょっと休憩」と肩をグルグル回すと、キッチンへ行って「飲み物もらうぞー」と冷蔵庫を開けた。

「あ、冷蔵庫今からっぽですよ。私コンビニで何か買ってきます」
 
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