俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
 
そう言って私はお財布を持って玄関を出ようとする。

「いってきまーす」とドアを開け玄関を出た瞬間、ドアの前に立ってインターフォンを押そうとしていた人物と目が合った。

「あらっ」

ドアの前に立っていた人物は目を大きくして、そんな驚きの声をあげる。そして。

「あらやだ、びっくりしたわあ。ピンポン鳴らす前に出てきちゃった」

ケラケラと明るい笑い声を立てて、隣に立つ男性の腕をバシバシと叩いた。

「お……お母さん! お父さん!」

今まさしくインターフォンを押そうとしていた人物は、まごうことなき私の父と母だった。

「な、なんで!? どうして!? えぇっ!?」

鹿児島にいるはずの両親が突如として目の前に現れ、私は全力で動揺する。

すると母は手に持った寿印入りの紙袋を掲げて見せて、「知り合いの人の結婚式に呼ばれてねえ。まっすぐ帰るつもりだったんだけど、お父さんが急に梓希の顔が見たいって言うもんだから、ちょっと寄ってみたのよ」なんて朗らかに言った。

「でもいてくれてよかったわあ。急だし、ピンポン鳴らしていなかったら帰ろうねってお父さんと言ってたのよ」

なんつー気まぐれな突撃訪問だ。よりによって今このタイミングで鉢合わせたことに、自分の運のなさを呪うしかない。
 
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