俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
 
翌朝。今日から仕事始めの私たちは、ふたり揃って玄関を出て駅へ向かった。

「えーっと、今日は帰り遅いんでしたっけ」

「そう。挨拶回りの後、取引先の新年会。たぶん明日も挨拶いった後、誘われるな。しばらくは帰り不定期になると思うから、悪いけど晩飯は別々でな」

「わかりました」

年末年始の挨拶周りと忘年会や新年会などへの参加は、営業部員の宿命だ。パーティーなどに正式に招待されることもあれば、内輪の宴会に呼ばれることもある。

周防さんはお酒には強い方だけれど、やっぱり連日の飲酒は彼の体が心配だ。

「明日の朝から、朝食はしばらく和食にしましょうか」

そう提案した私に、彼は「なんで?」と不思議そうに聞く。

「毎朝しじみのお味噌汁作るから飲んでください。しじみは肝臓にいいんですよ」

私の言葉を聞いた周防さんは「ははっ」と小さく笑い、「かわいいなあ、お前は。ほんと好きだよ、そういうとこ」と私の肩を抱き寄せて歩いた。

そんな感じで始まった休み明け。

クリエイティブ部の方は営業部と違ってさほどいつもと変わらず、業務に追われていく。

年末から続いているデザイン案と修正に取り組み、適当なところで昼休憩をとることにした。

「梓希ー」

社内のカフェに行こうか外でなんか買ってこようか迷いながら廊下を歩いていると、ふと後ろから呼びかけられた。 
 
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