俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
 
「あれ、和花ちゃん。社内にいたんだ」

振り返った先にいたのは和花ちゃんだった。

彼女も営業部なので今日は挨拶回りで出ずっぱりだと思っていたので、少し驚いた。

「てっきり今日は営業部はみんな出てると思ってたよ」

「うん、外出てたんだけどね。会社の近くまで来たし、梓希とちょっと話したいなーと思って、帰ってきたの」

「私と?」

和花ちゃんはコクリと頷くと「これからお昼だよね、一緒に行こ」と言って微笑んだ。

私もそれに頷き返しながら、忙しい中わざわざ会社に戻ってきてまで私に話したいことってなんだろう?と内心不思議に思いながら歩いた。

なるべく会社の人たちがいないところがいいからと、和花ちゃんが連れてきたのは会社のビルから少し離れたインドカレー屋さんだった。

それぞれシーフードカレーと豆のカレーをオーダーし、少しかしこまった雰囲気で向かい合う。わざわざ会社の人の目を避けるということは、単なる雑談じゃないということだ。

「……で、話ってなに?」

改まって尋ねた私に、和花ちゃんはモジモジとしながら「驚かないで聞いてね」と前置きをしてから口を開く。

「実はね、私――会社辞めるの」

「えぇ……っ」

驚くなと言われたのにうっかり大声を出しそうになって、私は慌てて口を両手で押さえた。
 
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