俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
 
「ほら、ね。梓希さん。全然効いてないでしょ?」

ニコニコしながら小宮山さんが言ったその台詞に、私はハッと息を呑んだ。

そして勢いよく振り向くと、怒ってはいるものの特に何の変哲もない周防さんに詰め寄って問い詰める。

「し……っ、死んでない! どうして死なないんですか周防さん⁉」

「は、はぁ?」

すさまじく物騒なことを言った私に周防さんは眉をしかめたけれど、すぐに何かに気づいたように表情を変えた。

口もとを手で押さえ気まずそうな顔をしている周防さんに、小宮山さんが穏やかながら真剣な口調で尋ねる。

「そんな顔をするってことは、やっぱり分かってて演じてたんですね? 周防さん」

小宮山さんを睨みつける周防さんの忌々し気な表情が、答えを語っていた。

――周防さんの心臓は動いている。私が家を出ていっても、目の前で他の男性とキスをしても。そして彼は『愛を受けられなくては死ぬ』という惚れ薬のルールを知っていて、その通りに演じなかったことを自覚したとき『失敗した』という表情を浮かべた。

「……嘘……」

私は彼に詰め寄っていた体を離すと、うしろに後ずさりながら呆然と呟いた。

(全部、全部知っていたの? 最初から? 全部分かってて演技していたの? 私にキスしたのも、一緒に暮らしたのも、何度も好きだって言ったのも、両親に結婚の宣言までしたのも――全部嘘? 演技だったの?)
 
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